遺言書は、自分の意思を明確に未来へ残すための重要な法的文書です。しかし、遺言書を作成せずに亡くなると、相続は法律のルール(法定相続)に従って進められ、手続きの煩雑さや家族間のトラブルを招く原因になることもあります。本記事では、遺言書がない場合に起こり得るリスクと、遺言書を作成することで得られるメリットをわかりやすく解説します。
遺言書がないとどうなる?|法定相続の基本
遺言書がない場合、相続は民法で定められた「法定相続」に基づいて行われます。
法定相続では、相続人の順位や取り分が以下のように定められています。
- 配偶者:常に相続人(第一順位と併せて相続)
- 子ども:配偶者と1/2ずつ分割
- 直系尊属(親など):子どもがいない場合、配偶者と分割
- 兄弟姉妹:上記がいない場合に相続人となる
例:配偶者と子ども2人がいる場合
- 配偶者:1/2
- 子ども2人:1/4ずつ
一見、平等なルールのように思えますが、実際には財産の内容や家族関係によりトラブルの火種となることが少なくありません。
遺言書がない場合に起こりやすいトラブル
1. 遺産分割協議の手間と負担
遺言書がなければ、**すべての相続人で「遺産分割協議」**を行う必要があります。
協議がまとまるまで、預金の解約や不動産の名義変更はできません。
- 全員の同意が必要(1人でも反対すれば手続きは進まない)
- 協議書には実印と印鑑証明が必要
- 相続人が全国に散らばっている場合、時間も費用もかかる
2. 家族間の感情的な対立
「介護をしていた長男が多くもらうべき」「長年連絡を取っていなかった兄に渡すのは納得できない」など、感情のもつれが表面化しやすくなります。
特に不動産や事業資産がある場合、分割の方法を巡って深刻な争いになることも。
3. 財産凍結による生活への影響
相続手続きが終わるまで、以下のような問題が発生します。
- 銀行口座の凍結により、葬儀費用や生活資金が引き出せない
- 不動産の名義が変えられず、売却や活用ができない
- 相続税の申告・納税に間に合わないリスク
遺言書がある場合の3つの大きなメリット
1. 遺産分割協議が不要
たとえば「自宅は長男に、預貯金は次男と次女で均等に」と明記されていれば、その内容に従って手続きを進めることが可能です。
2. 家族間の対立を予防できる
「なぜこのような分け方をしたか」など理由も記載しておけば、感情的な誤解を避けられます。
3. 希望どおりの財産分配が可能に
法定相続ではできないような分け方も、遺言書なら実現できます。
- 障がいのある子どもに手厚く残す
- 介護を担った子へ感謝を込めて遺贈
- 法人や慈善団体への寄付も可能
遺言書を作成すべき具体的なケース
- 相続人が複数いて、財産の分け方に不安がある
- 再婚しており、前妻の子との関係がある
- 財産の大半が不動産など、分割が難しいもの
- 特定の相続人や第三者に多く残したい意思がある
- 障がいのある子の将来に備えておきたい
遺言書を作成する際のポイント
1. 財産内容の整理
不動産・預金・株式など、すべての財産を明確にリストアップしておきましょう。
2. 相続人・受遺者の確認
誰に何を遺すのか、氏名・財産の内容・理由も含めて具体的に記載することが望ましいです。
3. 専門家への相談
法律に従った正しい内容・形式で遺言を残すには、行政書士などの専門家のサポートが安心です。
4. 保管方法の選択
自筆証書遺言の場合は、法務局の保管制度を利用することで、紛失・改ざんのリスクを回避できます。
まとめ|“想い”を残す準備は早いうちに
遺言書がないまま人生を終えると、相続人に大きな負担と混乱を残してしまう可能性があります。
一方で、遺言書をしっかり準備しておけば、家族を守り、自分の意思を尊重してもらえる相続が実現できます。
遺言書は、法的な知識と配慮を要する繊細な書類です。
不安や疑問がある方は、遺言書作成を得意とする行政書士への相談をおすすめします。
函館市・道南エリアで遺言や相続についてお悩みの方は、松倉行政書士事務所が丁寧にサポートいたします。
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