就労継続支援B型事業所では、利用者の通所を支援するために送迎サービスを提供することが多く、この送迎にかかる体制を評価する仕組みとして「送迎加算」があります。この加算は、利用者の通所環境の整備だけでなく、事業所の運営安定にもつながる重要な制度です。加算には「送迎加算(Ⅰ)」と「送迎加算(Ⅱ)」の2種類があり、それぞれの要件に応じた活用が可能です。本記事では、送迎加算の概要と要件、導入による効果、そして実務での適用ポイントについて詳しく解説します。
送迎加算とは
送迎加算は、障がいのある利用者が安心して通所できるよう、事業所が送迎サービスを提供した際に加算される制度です。特に移動に不安や困難がある利用者に対して、自宅や最寄駅、集合場所から事業所までの移動手段を確保することで、支援の継続性や通所意欲の向上を促します。
この加算は、送迎にかかる人件費や車両維持費などの費用を補填し、事業所が安定的に送迎を提供できるよう設計されています。
送迎加算の区分と要件
送迎加算(Ⅰ)
単位数:21単位(片道につき)
主な算定要件:
- 一度の送迎で平均10人以上の利用者を送迎している
(定員が20人未満の場合は、定員の50%以上の送迎が必要) - 週3回以上の送迎を継続的に実施している
この加算は、比較的多くの利用者を送迎する体制が整っている事業所向けです。一定の運用規模が求められるため、安定的な利用者数の確保も重要です。
送迎加算(Ⅱ)
単位数:10単位(片道につき)
主な算定要件:
- 送迎(Ⅰ)の基準を満たさない場合でも、送迎サービスを提供していれば適用可能
小規模な事業所や、送迎回数・利用者数が限られるケースでも柔軟に算定できるため、さまざまな運営形態に対応可能です。
送迎加算導入による主なメリット
利用者の通所負担を軽減
障がいや高齢による移動困難を抱える利用者にとって、通所手段の確保は重要な要素です。送迎サービスがあることで、日々の通所が継続しやすくなり、安心して就労支援に取り組める環境が整います。
利用者数と通所頻度の安定化
通所のハードルが下がることで、新規利用者の獲得や既存利用者の通所継続につながります。結果として、事業所の稼働率が安定し、支援体制の強化にも寄与します。
地域や関係者からの信頼向上
送迎を含めた一貫した支援体制は、利用者や家族、支援機関からの評価を高めます。地域に根ざした支援事業所としての信頼性も向上し、連携の強化が図れます。
財政面での安定と拡充
送迎に要する費用の補填だけでなく、加算による追加収入をサービス向上や設備投資、人材育成などに活用することで、事業所全体の成長が可能になります。
送迎加算を適用するための実務的ポイント
安全な車両と設備の整備
車椅子対応車両やスロープ付き車両の導入など、利用者に配慮した車両設備が求められます。安全運行のための定期点検や清掃、整備も日々のルーティンとして徹底する必要があります。
運転者と介助者の配置と教育
運転手には安全運転の技術だけでなく、福祉的配慮や緊急時対応の知識も求められます。必要に応じて介助スタッフが同乗することで、より安心・安全な送迎が実現します。
記録と帳票の適切な管理
送迎加算の算定には、実施記録や利用者別の送迎履歴が必要です。記録の整備は、監査対応や申請時の資料としても重要な役割を担います。
申請手続きの確実な実行
送迎加算の取得には、自治体への正確な申請が不可欠です。必要書類を整え、指定された期限内に漏れなく提出する体制づくりが求められます。
送迎加算活用による実務的な波及効果
送迎加算を活用している事業所では、通所率の向上や新規利用者の受け入れがスムーズになる事例が多く見られます。送迎の提供により、通所の物理的・心理的なハードルを下げ、継続的な利用が促進されるとともに、家族からの信頼獲得にもつながります。
また、送迎による定期的な対面接点が生まれることで、利用者の変化や課題をいち早く把握し、支援の質を高める一助にもなります。
まとめ
送迎加算は、就労継続支援B型事業所が地域の利用者に寄り添ったサービスを提供するために欠かせない制度です。送迎加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の2区分は、事業所の体制やニーズに応じて使い分けることができ、運営の柔軟性と安定性を高めることが可能です。
利用者にとって通所がより身近で安全なものとなるよう、制度の趣旨を正しく理解し、実務に落とし込むことが求められます。送迎加算の活用により、サービスの質の向上と事業所の持続的な発展の両立を目指しましょう。