統合失調症は、幻覚や妄想、思考の混乱などが起こる精神疾患であり、長期的な支援と理解が必要な病気です。しかし、その症状の特性から「怖い」「よくわからない」といった誤解や偏見にさらされやすい一面もあります。本人も周囲も混乱しやすいこの病気を正しく理解することが、安定した生活への第一歩です。この記事では、統合失調症の主な症状や経過、発症のきっかけなどをわかりやすく解説します。
統合失調症とは？
統合失調症（とうごうしっちょうしょう）は、思考・感情・行動に影響を与える脳の機能障がいで、主に10代後半〜30代にかけて発症することが多い病気です。以前は「精神分裂病」と呼ばれていましたが、誤解や偏見を減らすため、2002年に現在の名称へと変更されました。
発症の原因は完全には解明されていませんが、脳内の情報伝達のバランスの崩れ（ドーパミンの異常など）や、ストレス、遺伝的な要因、生活環境などが関係しているとされています。
主な症状の分類
統合失調症の症状は、大きく3つのタイプに分類されます。
1. 陽性症状（通常ないものが現れる）
- 幻覚（特に幻聴）：誰もいないのに声が聞こえる、「悪口を言われている」と感じる
- 妄想：被害妄想（誰かに監視されている）、誇大妄想（自分は特別な存在だ）など
- 思考の混乱：話の内容が飛びやすい、論理がつながらない
これらの症状が強いときは、現実との区別がつきにくくなり、周囲とのコミュニケーションが困難になります。
2. 陰性症状（本来あるべきものが失われる）
- 意欲の低下：身の回りのことができない、外出しなくなる
- 感情の平板化：喜怒哀楽の反応が乏しくなる
- 会話の乏しさ：返答が少なく、話すことを避けるようになる
周囲からは「やる気がない」「怠けている」と誤解されがちですが、脳の機能として意欲や感情の働きが鈍っている状態です。
3. 認知機能の障害
- 記憶力や集中力の低下
- 注意が続かない
- 状況の理解や判断に時間がかかる
これらは学業や仕事、人間関係に影響を及ぼしやすく、社会生活への支援が必要になります。
発症の経過と回復の流れ
統合失調症は、以下のような段階を経て経過します。
◉ 前兆期
- 不安感、睡眠障がい、集中力の低下、人づきあいの回避など
- 周囲からは「ちょっと元気がない」「疲れてるのかな」と見えることも多い
◉ 急性期
- 幻覚・妄想・混乱が強く出て、生活や対人関係に大きな支障が出る
- 本人は現実と区別がつかないことも多く、周囲の対応が重要になる
◉ 回復期
- 症状が徐々に落ち着いてくる
- 不安や疲労、社会復帰への不安などが出やすい時期
◉ 安定期
- 症状は落ち着くが、再発防止と生活支援が必要
- 社会生活や就労への段階的なサポートが求められる
統合失調症は「治らない病気」ではない
かつては「一度発症したら一生治らない」と考えられていましたが、現在では適切な治療と支援によって症状のコントロールが可能であり、多くの人が地域で自立した生活を送っています。
再発のリスクはあるものの、薬物療法・精神療法・福祉的支援の組み合わせにより、安定した状態を長く保てるケースも増えています。
誤解と偏見を減らすことが社会の支援に
統合失調症は、幻覚や妄想などの「分かりにくさ」から誤解されやすく、「怖い」「危ない」といった偏見が根強い精神疾患の一つです。しかし、実際には適切な治療と関わりで安定した生活を送れる病気であり、むしろ支援や理解の不足が本人を孤立させてしまうことが多いのです。
まとめ：統合失調症は「理解」が第一の支援になる
統合失調症は複雑な症状を伴いますが、「特別な人だけの病気」ではなく、誰にでも起こり得る脳の不調です。幻覚や妄想の背景にある本人の苦しさ、不安、混乱を理解し、「なぜそんな行動をとるのか」に目を向けることが、支援の第一歩となります。
次回のブログでは、統合失調症のある方への具体的な支援方法や接し方の工夫について詳しく紹介します。