移行型任意後見制度は、元気なうちから生活支援を受けられる「委任契約」と、将来の判断力低下に備える「任意後見契約」をセットにした仕組みです。段階的に支援を受けられることで、切れ目のない安心を実現できます。本記事では、移行型任意後見の特徴やメリット、手続きの流れ、注意点についてわかりやすく解説します。
移行型任意後見制度とは?
移行型任意後見制度は、現在の生活支援と将来の法的支援をつなぐ契約セットです。
具体的には、
- 「委任契約」:今すぐ必要な支援(生活・財産の補助)
- 「任意後見契約」:将来に備えた支援(判断能力低下後の後見)
この2つを同時に結ぶことで、元気なうちからサポートを受けつつ、将来の不安にも備えられます。
どんな人におすすめ?
- 一人暮らしで日常の手続きに不安がある方
- 軽度の物忘れなどが出てきて、将来が心配な方
- 家族が遠方に住んでいて、身近に頼れる人がいない方
- 信頼できる支援者と継続的な関係を築いておきたい方
移行型任意後見制度は、「まだ後見人は必要ないけど、少し手助けがほしい」という段階の方に最適です。
移行型任意後見の仕組みと流れ
① 委任契約を結ぶ(今からの支援)
信頼できる相手と委任契約を結び、以下のような支援を任せます:
- 銀行や役所での手続きの代行
- 医療・介護サービスの相談・同行
- 日常的な財産管理や支払い代行
※この段階では、法的には「後見人」ではなく、あくまで支援者です。
② 任意後見契約を公正証書で結ぶ(将来への備え)
同じ相手と任意後見契約も締結します。契約は公証役場で「公正証書」として作成し、判断能力が低下したときに発効する内容を定めます。
③ 必要になったら任意後見契約が発効
本人の判断能力が低下したと家庭裁判所が判断すると、「任意後見監督人」が選任され、任意後見契約が正式に発効します。
この段階からは、後見人として法的な代理権限を持ち、より強力な支援体制が整います。
任せられる内容の一例
契約種類 | 支援内容例 |
---|---|
委任契約 | 銀行手続きの代行、書類作成の補助、買い物の同行など |
任意後見 | 財産管理、医療契約の締結、不動産の手続き、介護契約など |
契約内容は個別に設定できるため、本人の希望に沿った支援体制を柔軟に組み立てることが可能です。
メリットまとめ
- 元気なうちから支援を開始できる
- 同じ人が継続してサポートするため安心感がある
- 生活の変化に応じて契約を移行できる(切れ目のない支援)
- 判断能力があるうちに、自分の意志で支援内容を決められる
注意点と費用について
- 契約費用が発生します
公証役場での手数料(1~2万円前後)、書類作成費用、登記費用など - 任意後見監督人の報酬が発生する場合があります
発効後は月額1万~2万円程度が相場 - 信頼できる相手選びが最重要
長期間にわたって支援を受けるため、慎重な人選が不可欠です
まとめ
移行型任意後見制度は、「今の支援」と「将来の安心」をつなぐ実用的な選択肢です。
委任契約からスタートして、必要に応じて任意後見契約に移行することで、切れ目のない支援体制を構築できます。
判断能力がある今だからこそ、自分の希望をしっかりと形にすることができます。
一人暮らしの方、将来が不安な方は、福祉専門行政書士などの専門家に相談しながら、早めの準備を進めてみましょう。