知的障がいは、単なる学習の遅れや物覚えの悪さではなく、認知や判断、日常生活におけるさまざまな機能において継続的な困難を伴う障がいです。外見からは分かりづらいことも多く、誤解や偏見を受けやすい障がいの一つでもあります。このブログでは、知的障がいの基本的な定義や分類、見られる特性などを紹介し、支援の話に入る前の「理解するための土台」を整えることを目的とします。
知的障がいとは?
知的障がいは、発達期(おおむね18歳まで)に生じる知的機能の障がいであり、学習能力や問題解決能力、判断力といった認知的な機能に制限がある状態を指します。また、日常生活に必要な社会的スキルや自己管理能力にも困難がある場合が多く、これらの特徴が一体となって現れます。
知的障がいの診断には、「知能指数(IQ)」だけでなく、「適応行動(生活能力)」の程度が重視されます。
主な診断基準と分類
知的障がいの診断においては、以下の要素が重視されます。
1. 知的機能の制限
IQ(知能指数)が70前後以下の場合が一般的な目安とされます。ただし、単にIQが低いというだけではなく、社会的に必要な行動能力とのバランスで判断されます。
2. 適応行動の制限
日常生活において、年齢相応の行動ができるかどうかを評価します。以下のような行動に困難がある場合があります:
- 衣服の着脱や身だしなみ
- 金銭管理や交通機関の利用
- 他者との意思疎通や対人関係の構築
3. 発達期に生じていること
知的障がいは、生まれつきもしくは発達段階において明らかになり、成人期以降に初めて生じるものではないとされています。
知的障がいの程度分類(参考)
知的障がいは、その程度に応じて一般的に以下のように分類されます(※医学的分類に基づく概略です)。
分類 | IQ目安 | 特徴的な傾向 |
---|---|---|
軽度 | 50~69 | 学校教育や簡単な仕事は可能だが、複雑な判断には支援が必要 |
中等度 | 35~49 | 基本的な生活動作は習得可能だが、日常生活で広範なサポートが必要 |
重度 | 20~34 | 身体介助が必要な場合も多く、常時の支援が必要 |
最重度 | 20未満 | 自己表現や意思疎通に困難があり、全般的な介護が必要 |
知的障がいのある方に見られる特性
知的障がいのある方には、次のような特性が見られることがあります。ただし、すべての人に当てはまるわけではなく、個人差が非常に大きい点が重要です。
1. 言語や理解力の遅れ
指示を理解するのに時間がかかったり、語彙が限られていたりすることがあります。
2. 抽象的な概念の理解が難しい
「将来のために頑張る」「空気を読む」などの曖昧な表現や抽象概念は伝わりにくい傾向があります。
3. 記憶力や注意の持続に課題がある
一度に多くの情報を処理したり、長時間集中したりすることが難しい場合があります。
4. 生活の中での行動に偏りが出る
ルーティンを好み、予定外の出来事に混乱したり、不安を感じやすかったりすることもあります。
知的障がいとその他の障がいとの違い
知的障がいは、発達障がいや精神障がいとは異なる特性を持ちますが、併存する場合も少なくありません。
- **発達障がい(例:自閉スペクトラム症)**と異なり、知的障がいは全般的な知的機能の遅れが中心です。
- **精神障がい(例:統合失調症)**のような発症時期の変化やエピソード的な症状とは異なり、知的障がいは発達期から持続的に現れる傾向があります。
知的障がいへの理解を深めるために
知的障がいを持つ方の行動や反応を、「わざと」や「理解できない人」として捉えてしまうと、誤解や不適切な対応につながります。まずは、「なぜその行動が起こっているのか」という視点を持ち、背景にある特性や認知の違いを理解することが大切です。
また、知的障がいは目に見えにくい障がいであるため、周囲の無理解がストレスとなることも少なくありません。まずは知識を持ち、偏見なく関わる姿勢が、共生社会を実現する第一歩となります。