相続人の中に相続放棄をした人がいる場合、遺産分割協議書の作成方法に注意が必要です。民法上、相続放棄をすると最初から相続人でなかったものとされるため、基本的に協議書に署名や押印は不要ですが、記載方法や証明書の添付が求められる場面もあります。この記事では、相続放棄があった場合の協議書の記載例や注意点について、手続きの流れとともに詳しく解説します。
相続放棄をした人は「相続人でなかった」扱いになる
家庭裁判所で正式に相続放棄の申立てが受理されると、法律上その人は最初から相続人でなかったものと見なされます。
そのため、遺産分割協議書に署名や押印を求める必要は原則ありません。ただし、協議書に相続放棄があった事実を記載することで、他の相続人や手続きを受け付ける機関にとってわかりやすくなります。
相続放棄は家庭裁判所での手続きが必要
口頭での放棄は無効
「相続しない」「いらない」といった口約束やメモでは法的な相続放棄とは認められません。相続放棄を有効にするには、家庭裁判所に申述を行い、受理されることが必要です。
- 相続放棄の期限:被相続人の死亡を知ってから3か月以内が原則
- 必要書類:相続放棄申述受理通知書、または相続放棄申述受理証明書
これらの証明書は、不動産登記や金融機関の相続手続きで提出を求められることがあります。
遺産分割協議書への記載例
相続放棄をした人の情報は、協議書に以下のように明記するのが一般的です。
<記載例>
「相続人 ○○○○ は、令和○年○月○日付で○○家庭裁判所に相続放棄の申述を行い、受理された。」
このように記載することで、協議に参加していない理由を明確にし、後の確認作業やトラブル防止につながります。
注意点①:代襲相続と次順位の相続に要注意
相続放棄をした人に子どもがいる場合は、代襲相続が発生する可能性があります。また、相続人全員が放棄した場合には、**次順位(例えば兄弟姉妹)**の相続人が新たに対象となります。
したがって、相続放棄がある場合には、相続人の範囲を再確認することが極めて重要です。誤って無関係な人を除外したまま協議を進めてしまうと、協議書が無効になるリスクがあります。
注意点②:登記や金融機関では証明書の提出が必要なことも
相続放棄があったことを証明するために、**「相続放棄申述受理証明書」**の提出を求められるケースがあります。
特に不動産の登記申請では、協議書の記載に加え、この証明書の添付が求められることもあるため、申述後は必ず証明書を取得しておきましょう。
相続放棄があっても協議書は作成可能
相続放棄があったからといって、遺産分割協議書を作成できないわけではありません。
- 放棄した人を除いた相続人全員で協議を行い
- その合意内容を協議書にまとめる
協議書の中で放棄の事実を明記し、証明書を添付すれば、法律上の手続きも問題なく進められます。
専門家への相談で確実な対応を
相続放棄が絡む場合は、協議書の記載内容や相続人の特定に不備が出やすいため、行政書士や弁護士などの専門家に相談することが安心です。
以下のようなサポートを受けられます:
- 協議書の作成・記載チェック
- 放棄証明書の確認・取得サポート
- 相続人の再確認と代襲・次順位の判断
まとめ:相続放棄がある場合の協議書は慎重に
相続放棄があった場合、法的にはその人は「最初から相続人でなかった」として扱われますが、協議書には明確な記載と証明書の添付が必要になることがあります。
家庭裁判所での正式な手続きが行われているかを確認し、残された相続人全員で正しく協議を進めることが、円満で確実な相続への第一歩です。
不明点があれば、早めに専門家の力を借りて、トラブルのない相続手続きを整えましょう。