相続手続きを始めるにあたり、まず必要なのが「相続人の確定」です。しかし、相続人調査は一見単純に思えても、戸籍の読み違いや見落としによって大きなトラブルにつながることもあります。この記事では、相続人調査を行う際の注意点や見落としがちなポイント、トラブルへの対処法を詳しく解説します。
相続人調査で見落としがちなポイント
相続人調査では、被相続人の戸籍を正確にたどることが基本ですが、以下のような見落としやすいケースに注意が必要です。
転籍や改姓があった場合
被相続人が生涯の中で複数回の転籍や改姓をしている場合、それぞれの戸籍を追う必要があります。
- 転籍によって本籍地が変わっていることがある
- 婚姻・離婚や養子縁組で氏名が変更されている可能性も
一つの戸籍だけでは相続人の全体像が把握できないため、出生から死亡までの戸籍をすべて取得することが不可欠です。
婚姻・離婚歴の確認
婚姻や離婚により、被相続人に別の配偶者や子どもが存在するケースがあります。
- 離婚後に生まれた子も法定相続人になることがあります
- 再婚相手との間の子がいる場合も同様に確認が必要です
養子縁組の見落とし
被相続人が養子を迎えていた場合、その養子も実子と同様に法定相続人に含まれます。
- 養子縁組の事実が戸籍に記載されているかを必ず確認
- 養子が他家に出ていた場合なども注意が必要
複数の戸籍がある場合の調査方法
戸籍は人の一生の変化に応じて何度も作り直されるため、被相続人に関する戸籍が複数存在するのが一般的です。
転籍先の確認と最新戸籍の取得
現在の本籍地から、被相続人がどこに転籍したかを調査し、最新の戸籍(現在戸籍)を取得します。
過去の除籍・改製原戸籍の確認
過去の本籍地で作成されていた戸籍も必要です。
- 除籍謄本、改製原戸籍などを取得し、親子関係や兄弟姉妹などを確認します
- 複数の市区町村にまたがっていることも多いため、手間がかかる場合があります
戸籍の見方と読み解き方
戸籍には多くの情報が記載されており、正確に読み解く力が必要です。
氏名・生年月日の確認
同姓同名の親族が複数いる場合もあるため、生年月日と合わせて確認することが重要です。
続柄の確認
被相続人との続柄を正確に把握することで、法定相続人か否かの判断ができます。
婚姻・離婚・死亡の記録
戸籍には、婚姻・離婚・死亡の履歴情報も記載されているため、その時点での家族構成が把握できます。
相続人調査中に起こりやすいトラブルと対処法
情報不足で調査が進まない
被相続人の戸籍の本籍地が分からない、婚姻歴が不明など、調査の出発点が曖昧な場合があります。
- 被相続人の住民票除票や戸籍の附票を活用
- 家族や関係者に聞き取りを行うことも有効です
戸籍の記載ミス・誤解
戸籍の内容が読み違えやすい表現で書かれていることがあります。
- 誤読により相続人の範囲を誤ると、無効な遺産分割協議書を作成してしまうリスクも
- 内容に疑問がある場合は、自治体に照会するか専門家に確認を依頼
行方不明の相続人がいる
相続人の中に連絡が取れない人がいる場合は、家庭裁判所に特別代理人の選任申立てを行うことが可能です。
相続人調査を正確に進めるために
相続人の確定は、相続手続きの第一歩であり、誤りがあると後のすべての手続きに影響します。
以下のような場面では、行政書士など専門家のサポートを受けることが安心です。
- 戸籍の取得や読み解きに不安がある場合
- 転籍・改姓など複雑な経歴がある場合
- 相続人の人数が多く、関係が複雑な場合
まとめ:相続人調査は正確さと慎重さが重要
相続人調査には、戸籍の読み違いや見落としなど意外な落とし穴が多く存在します。
小さなミスが相続全体のトラブルを引き起こすこともあるため、制度の理解と丁寧な調査が不可欠です。
安心して相続を進めるためにも、相続人調査の段階から行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。