遺言書

相続人同士の仲が悪いときこそ必要な遺言書|争いを防ぎ、家族を守るための準備

    相続は単なる財産分与の問題ではなく、家族関係や感情が複雑に絡み合う場面でもあります。特に、相続人同士の仲が悪い場合、遺産分割をめぐる対立が激化し、家庭裁判所での調停や訴訟に発展することも珍しくありません。そうしたトラブルを未然に防ぐためには、遺言書の作成が極めて有効です。本記事では、相続人間の関係が悪い場合に起こり得るリスクと、遺言書の持つ大きなメリットについて解説します。


    仲が悪い相続人同士で起こりやすい問題とは

    1. 遺産分割協議の行き詰まり

    遺言書がなければ、相続人全員で遺産の分け方を決める「遺産分割協議」が必要です。しかし、仲が悪い相続人同士では…

    • 合意形成が困難
    • 協議が何度も頓挫
    • 感情的な争いがエスカレート

    結果として、家庭裁判所での調停や訴訟に進むケースもあります。


    2. 感情に基づく不満・不公平感

    以下のような主張の衝突がよくあります。

    • 「介護してきた自分が多くもらうべき」
    • 「不動産は現金にして等分すべき」
    • 「あの人だけ贈与を受けてズルい」

    → 法定相続ではこうした貢献度や事情は反映されにくく、不満が蓄積しやすいのが現実です。


    3. 相続税・手続きの遅延

    仲が悪いと協議が進まず、**相続税の申告期限(10カ月)**に間に合わないことも。延滞税や加算税など、無駄な支出が発生します。


    4. 財産の不正使用や隠匿

    正式な分割が決まる前に、一部の相続人が…

    • 預貯金を勝手に引き出す
    • 不動産を占有・使用する

    → 他の相続人との信頼関係が完全に崩れる要因に。


    5. 家族関係の破壊

    相続をきっかけに絶縁状態に陥ったり、「一生許さない」レベルの対立に発展することもあります。


    遺言書の5つのメリット|相続トラブルを防ぐために

    1. 遺産分割協議が不要に

    「○○の土地は長男へ」「預金は長女と次女で折半」といった明確な指示があることで、話し合いの必要がなくなります。


    2. 公平性と納得感の確保

    遺言書があれば、例えば…

    • 「介護をしてくれた○○には感謝の意を込めて多めに」
    • 「長男には自宅、不公平感をなくすため次男には現金〇〇万円」

    家族ごとの背景に即した分配ができるため、不満が出にくいのです。


    3. 相続税対策にも効果的

    財産の分け方を事前に決めておくことで、申告・納税の準備がスムーズになり、無駄な延滞や罰則を回避できます。


    4. 家族関係の維持に役立つ

    感情的な争いを防ぎ、関係性がこれ以上悪化しないようにコントロールするためにも遺言書は大きな効果を持ちます。


    5. 「遺言者の意思」として尊重されやすい

    「親がこう決めた」と明示されれば、たとえ不満があっても相続人は受け入れざるを得ない場面が増え、相続争いの抑止力になります。


    遺言書作成の際のポイント

    ポイント内容
    具体的・明確な記載財産の種類・所在地・金額などを特定し、「誰に、何を」明記します
    法的な形式に則って作成自筆証書遺言 or 公正証書遺言を、法的に有効な形で準備
    公平性・理由の記載不公平と受け取られそうな内容には、理由を付記するとトラブル回避に有効
    専門家のチェックを受ける行政書士・弁護士に確認してもらい、無効や不備のリスクを回避

    専門家に相談する際の注意点|行政書士と弁護士の違い

    遺言書の作成にあたっては、専門家のサポートを受けることが安心・確実な方法ですが、その際には**「行政書士ができること・できないこと」**を正しく理解しておくことが大切です。

    行政書士ができること

    • 相続関係の聞き取り
    • 財産目録の作成サポート
    • 遺言書の文案作成や内容整理
    • 公正証書遺言の作成支援(公証人との調整)

    争いが想定されない平和的な相続については、行政書士がしっかりお手伝いできます。


    争いが起こる可能性がある場合は弁護士へ

    相続人同士の仲が悪く、将来的に**「遺留分侵害請求」「相続放棄の争い」「遺言無効の主張」**など、法律的な争いに発展する可能性があると感じた場合は、行政書士では対応できません。

    そのような場合は、弁護士の関与が必要です。
    行政書士は法的な争いには介入できないため、トラブルが予想される内容の場合には、当事務所でも信頼できる弁護士をご紹介するなどの対応をさせていただきます。


    松倉行政書士事務所では“事前予防”を重視します

    当事務所では、争いを未然に防ぐための「丁寧なヒアリング」と「公平性・具体性を重視した遺言書づくり」を基本としています。
    ただし、ご相談の中で将来的に法的な対立が想定される場合は、早い段階で弁護士への相談をお勧めしております。


    まとめ|“争族”を避けるための最善策は「遺言書」

    相続人同士の関係が悪い場合、相続は財産の問題を超えて、家族崩壊を引き起こす深刻な問題になります。
    遺言書は、そのリスクを未然に防ぎ、安心と納得の相続を実現するための鍵です。

    大切な家族が、あなたの最期の意思に従って平和に過ごせるように。
    ぜひ今、遺言書作成の準備を始めてみてください。


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