障害福祉サービスについて

月額賃金要件の実務対応と改善計画策定ガイド:処遇改善加算を確実に取得するために

    令和6年6月の制度改定により、処遇改善加算の取得において「月額賃金要件」が新たに明確化されました。これは、一時金偏重から脱却し、職員の基本給や月額賃金の安定的な引き上げを求める要件であり、職員の生活の安定と定着を図る上で極めて重要な位置づけとなっています。本記事では、月額賃金要件の具体的条件や旧ベースアップ加算との違い、対応のための計画策定手順について詳しく解説します。


    月額賃金要件の背景と改定の目的

    従来の処遇改善制度では、一時金や賞与による賃金改善が主流でした。しかし、職員の長期的な生活安定や業界全体の魅力向上には限界がありました。これを是正するため、令和6年の改定で「月額賃金要件」が新たに設けられました。

    改定の狙い

    • 基本給や月給ベースでの継続的な処遇改善
    • 一時金偏重の是正と職員の生活安定
    • 賃金配分の公平性・透明性の強化

    月額賃金要件の具体的条件

    要件1:加算Ⅳ相当額の 2分の1以上 を月額賃金に充当

    • 支給する処遇改善加算のうち、最低50%以上を基本給・月給に反映。
    • 賞与や一時金のみでの賃金改善では要件を満たさない。

    要件2:旧ベースアップ未算定事業所の場合

    • ベースアップ加算を過去に取得していない事業所は、加算額の 3分の2以上 を月額賃金に反映する必要あり。
    • 一層の給与水準改善が求められる。

    要件3:公平性・透明性の確保

    • 勤続年数や職務内容に応じた賃金テーブルの整備が必須。
    • 不公平感が出ないよう、昇給基準や配分ルールを明示する。

    計画策定のステップと具体的対応策

    ステップ1:現状分析

    • 各職員の**賃金構成(基本給・手当・一時金など)**を整理
    • 課題例:
      • 一時金の比重が高い
      • 昇給ルールが曖昧で、勤続年数が反映されていない

    ステップ2:目標設定

    • 数値で示す具体目標を設定
      • 例:基本給を5%引き上げ
      • 例:平均月額賃金を◯万円に引き上げ
      • 例:加算額の60%を月額賃金に充当

    ステップ3:取り組み内容の策定

    施策内容
    初任給の引き上げ採用促進と定着を目的に、入職時の条件を改善
    勤続年数ごとの昇給制度1年あたり定額昇給ルールの明文化
    資格取得者への加算介護福祉士、社会福祉士等に対し10%昇給
    管理職への加算強化職責に応じた役職手当を整備

    ステップ4:進捗管理と報告体制の整備

    • 半年ごとに計画達成状況をチェック
    • 実績を記録し、加算適用期間終了後に給与改善報告書を提出

    成功事例の紹介

    中規模事業所の例

    • 加算額の60%を基本給引き上げに使用
    • 昇給スケジュール・基準を全職員に共有し、納得感を確保
    • 資格取得後の基本給10%増額制度を導入し、スキルアップと給与改善を両立

    注意点とリスク管理

    課題対応策
    要件未達による加算停止リスク加算条件の最新情報を常時確認し、計画策定時に反映
    職員の不満・不公平感賃金改善方針を明文化・共有し、説明責任を果たす
    経済情勢の変化による見直し必要性柔軟に対応可能な運用ルールと再評価の体制を構築

    月額賃金要件を満たすメリット

    1. 職員のモチベーションと定着率の向上

    • 毎月の給与改善は、生活の安定と働きがいを直接的に支えます。

    2. サービスの質向上

    • 経験ある職員の定着が、利用者への安定した支援へとつながります。

    3. 事業所の信頼性向上

    • 公平性・透明性のある賃金体系は、外部評価や採用面にもプラスの効果を与えます。

    まとめ

    月額賃金要件は、処遇改善加算を確実に取得するための重要な条件であり、同時に職員の労働環境と待遇を持続的に向上させる仕組みです。計画的な賃金引き上げは、職員の定着・サービス品質・事業所の信頼性向上につながる好循環を生み出します。制度の主旨を正しく理解し、現場に即した現実的な計画を策定・運用していくことが、持続可能な福祉経営の鍵となります。

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