成年後見制度では、後見人が本人の生活を支えるために財産管理を担います。財産目録の作成、日常の支出管理、相続時の対応まで、実務的な作業は多岐にわたります。この記事では、後見人として必要な財産管理の基本と注意点を具体的に紹介します。
成年後見制度における財産管理の重要性
成年後見人の最も大きな役割の一つが、本人の財産を適切に管理することです。
この管理は、単にお金を預かるだけでなく、生活維持のための資金調整や法的手続きの対応も含まれます。
主な業務内容
- 預貯金の出納管理
- 月々の収支確認・記録
- 医療・介護・税金関連の支払い
- 不動産・動産の維持管理
- 相続発生時の初期対応
後見人はこれらを通じて、本人の安定した生活基盤を支える役割を担います。
後見開始時に必要な「財産目録」の作成
後見人に選任されたら、最初に行うべきは財産目録の作成です。
これは家庭裁判所への提出義務がある、非常に重要な書類です。
記載内容の例
| 項目 | 内容例 |
|---|---|
| 預貯金 | 口座番号、金融機関名、残高（通帳コピー添付） |
| 不動産 | 所在地、面積、名義、固定資産税評価額など |
| 株式・投資信託 | 保有銘柄、口数、評価額 |
| 年金収入 | 種類、支給額、振込先 |
| 借入金 | 借入先、残債、返済状況 |
※必ず正確な情報を記載し、証明書類を添付することが求められます。
日々の生活支出管理と注意点
後見人は、本人の生活に関わるあらゆる費用の支出を管理します。
支出には日常的なものから突発的な費用まで含まれます。
管理する支出の例
- 家賃・光熱費・食費
- 医療費、介護保険料
- 洗剤・衣類などの日用品
- 通院・通所の交通費
- 家電製品や家具の買い替え（※高額の場合は家庭裁判所の許可が必要）
すべての支出には領収書や記録の保存が必要です。家庭裁判所から求められる場合に備えて、月ごとに整理しておくと安心です。
相続が発生した場合の後見人の対応
本人が亡くなった時点で成年後見は終了しますが、後見人としての事後処理が必要となります。
相続対応で行うこと
- 遺言書の有無確認（特に公正証書遺言の有無）
- 財産状況の整理（生前の財産目録を更新）
- 相続人との連絡・調整
- 必要書類の引き継ぎと最終報告書の提出
※後見人が遺産分割協議書に署名するには、家庭裁判所の許可が必要です。単独で相続手続きに関わることはできません。
財産管理の実務で押さえるべきポイント
| ポイント | 詳細 |
|---|---|
| 記録の徹底 | 支出の領収書、通帳コピーなどを定期的に保管 |
| 透明性 | 家族や関係者との情報共有、裁判所への年次報告 |
| 判断に迷ったら相談 | 裁判所や行政書士に早めに相談し、リスクを避ける |
| 年1回の報告義務 | 「後見等事務報告書」を毎年提出する必要があります |
まとめ
成年後見制度における財産管理は、単なる「お金の管理」にとどまりません。
本人の尊厳を守る生活支援の一部であり、正確さと誠実さが求められる業務です。
特に財産目録の作成や日常的な支出管理、相続発生時の初期対応などは、制度に対する正しい理解が欠かせません。
「自分にできるか不安…」「記録の仕方がわからない…」と感じたら、函館の福祉専門行政書士など、実務に詳しい専門家にぜひご相談ください。
正確で安心な後見人業務のスタートを一緒に支援します。