「音がうるさくて耐えられない」「服のタグがチクチクして集中できない」——そんな感覚への過敏さは、周囲からは理解されにくく、本人にとって大きなストレスとなります。これは“わがまま”や“気にしすぎ”ではなく、感覚過敏(かんかくかびん)という神経の特性によるものです。感覚過敏は自閉スペクトラム症や発達障がいのある方に多く見られますが、そうでない方にも現れることがあります。この記事では、感覚過敏の種類と特性についてわかりやすく解説します。
感覚過敏とは?
感覚過敏とは、五感(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)や体の感覚に対して、一般よりも過敏に反応してしまう状態をいいます。
通常であれば気にならないような刺激でも、「痛い」「苦しい」「不快」と強く感じてしまうため、日常生活に大きな支障が出ることがあります。
感覚過敏の主な種類と特徴
感覚過敏は、人によって異なる感覚領域に現れます。複数の感覚にまたがって過敏さがあるケースも多くあります。
1. 聴覚過敏(音に敏感)
- 生活音(掃除機、チャイム、子どもの声)が「爆音」に感じられる
- 特定の音に突然パニックや強い不快感を示す
- 人ごみや騒がしい場所では混乱してしまう
例: 駅のアナウンスやスーパーのBGMが「頭に響いて耐えられない」
2. 視覚過敏(光や動きに敏感)
- 蛍光灯の光がまぶしすぎて頭痛がする
- 人の動きが多い場所で目がチカチカして疲れる
- 点滅する光や早い動きに不安を感じる
例: 教室の蛍光灯やテレビの画面が「目に突き刺さるように感じる」
3. 触覚過敏(皮膚や衣類に敏感)
- 服のタグ、縫い目、ゴムの締めつけなどが不快で集中できない
- 抱っこや肩に手を置かれるなどの触れられる感覚が苦手
- 水や砂、粘土などの感触が苦手で避ける
例: 「タオルの感触がゾワゾワして我慢できない」
4. 嗅覚過敏(においに敏感)
- 柔軟剤や香水、食べ物のにおいが強烈に感じられる
- においに気を取られて集中できない、気分が悪くなる
例: 他人の香水のにおいで吐き気や頭痛が起きる
5. 味覚過敏(味や食感に敏感)
- 味やにおいが強い食べ物を受け付けない
- 柔らかすぎる、かたすぎるなどの食感が苦手
- 食事に偏りが出やすく、好き嫌いが極端に見える
例: 「野菜がぬるっとしていて気持ち悪いから食べられない」
6. その他の身体感覚の過敏
- 熱さ・寒さ・痛みなどを過剰に感じる、または逆に鈍感になることもある
- バランス感覚や重力感覚の乱れ(乗り物酔いしやすい、ジャンプが苦手など)
感覚過敏は「感じ方」の違い
感覚過敏のある人は、感覚の受け取り方が非常に鋭敏であり、自分の意思で調整することができません。つまり、
- 気のせいではない
- 精神的な問題ではない
- 怠けているわけでも、甘えているわけでもない
ということを、まずは周囲が理解することが大切です。
どんな人に多く見られる?
感覚過敏は、以下のような人に比較的多く見られます。
- **自閉スペクトラム症(ASD)**のある方
- ADHDや**学習障がい(LD)**のある方
- **HSP(Highly Sensitive Person)**といわれる繊細な気質の方
- ストレス状態やうつ状態にある人
個人差が大きく、「全く平気なこと」が「とてもつらい」ことに感じられる――それが感覚過敏の難しさです。
誤解されやすい感覚過敏
感覚過敏のある方は、周囲から誤解を受けやすい傾向があります。
- 「なんでこれくらいでイヤがるの?」
- 「神経質すぎるんじゃない?」
- 「好き嫌いが多すぎる」
こうした言葉は、本人にとっては傷つきやすく、自己否定につながることもあります。感覚の違い=個性として受け止める社会の理解が求められます。
まとめ:感覚過敏は「脳の感じ方の個性」
感覚過敏は、目に見えない特性ですが、本人にとっては日常のあらゆる場面で大きな負担となります。「過剰に反応している」のではなく、そもそも世界の感じ方が違うということを、まずは知ることが大切です。
次回のブログでは、感覚過敏のある方への具体的な支援や環境調整の方法について紹介します。