学習障がい(LD)のある方は、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習領域に困難がある一方で、知的能力そのものには問題がないケースが多く見られます。大切なのは、できないことを無理に矯正しようとするのではなく、学びやすい方法に切り替えること。このブログでは、LDのある方が自信を持って学習や仕事に取り組めるようになるための、具体的な支援方法と関わり方を紹介します。
1. 「教え方」を変えてみる
LDのある方に対しては、本人の苦手なスタイルではなく、「得意な認知スタイル」に合わせた教え方が効果的です。
例:ディスレクシア(読字障がい)の場合
- 音読ではなく、耳から学ぶ(音声教材、読み上げ機能の活用)
- 教科書の代わりに、動画や図解を使う
- 文字を「見る」より「聞く」「動かす」で理解をサポート
例:ディスグラフィア(書字障がい)の場合
- 書く量を減らし、選択肢形式や口頭回答で対応
- タブレットや音声入力などを使った代替手段
- 板書を写す代わりにプリント配布や写真撮影を許可
学習の「やり方」を変えることで、苦手をカバーしながら学ぶことが可能になります。
2. 書かせるより「表現の自由」を認める
書字に困難がある場合、作文やノート記入などが大きなストレスになります。内容を伝える手段は文字だけではありません。
支援の例:
- イラストやマインドマップで表現
- 話して録音する・音声で提出する
- ワークシートを選択式に変更する
「表現方法の選択肢を増やす」ことが、学ぶ意欲と自己肯定感を高める支援になります。
3. 「計算ミス」より「理解の仕方」に注目
算数障がい(ディスカリキュリア)のある方は、数の概念や計算の手順に困難があります。単に「何度も練習する」のではなく、概念理解をサポートする工夫が必要です。
工夫の例:
- 実物(お金、ブロック、カード)を使って数量感覚をつかむ
- 計算手順を視覚化する図や色分けを活用
- 暗算を避け、電卓や計算カードの利用を許可
計算の正確さよりも、「意味を理解しているか」に注目することが大切です。
4. 環境を整えてストレスを軽減
学習環境が合っていないと、集中力が続かずミスが増える原因になります。本人が安心して学べる空間を整えることも、立派な支援です。
環境調整の例:
- 周囲の音や視覚刺激を減らす
- 学習の時間を短く区切る(15分単位など)
- 間違えても大丈夫な雰囲気づくり
- 障がいを開示することに本人が同意していれば、周囲にも理解を促す
「学びやすい環境」をつくることで、無用な失敗体験を減らせます。
5. 苦手を責めず、得意を伸ばす
LDのある方は、周囲から「なぜできないの?」と責められやすく、自信を失いがちです。しかし、特定の分野に強みを持っていることも多く、それを活かす支援が本人の力を引き出します。
支援の方向性:
- 絵や図が得意 → ビジュアル表現を活かした課題
- 話すことが得意 → プレゼンや発表で評価
- 手先が器用 → 実技中心の活動へ参加
「できないこと」ではなく、「できること」「好きなこと」に注目することが、本人の安心感とやる気を高めます。
6. 保護者や周囲との情報共有
支援は本人だけで完結しません。学校や職場、家庭など、関わる人全体で理解を深め、対応を共有することが重要です。
情報共有のポイント:
- 苦手なこと・得意なことのバランスを伝える
- 配慮の内容と目的を簡潔に説明する
- 本人の気持ちや希望も大切にする
共通の支援方針を持つことで、環境が一貫し、本人の安心につながります。
まとめ:「学び方を変える」ことが支援の第一歩
学習障がい(LD)のある方にとって、「普通のやり方」が必ずしも最適とは限りません。大切なのは、その人が学びやすく、安心して取り組める方法を見つけていくことです。支援の目的は、苦手をなくすことではなく、「できることを広げる」こと。
一人ひとりの認知の特性に寄り添った関わりが、「わかる・できる・楽しい」につながっていきます。