双極性障害のある方への支援では、躁状態と抑うつ状態という正反対の症状に対して、それぞれ適切に対応する必要があります。気分の波に本人も振り回されやすく、周囲も戸惑いがちですが、大切なのは「病気のせいで起きている」という前提で、責めず・焦らせず・見守る姿勢を持つことです。このブログでは、双極性障害Ⅰ型・Ⅱ型それぞれの特性に配慮した支援のポイントや、日常生活でできる実践的な接し方を紹介します。
1. 躁状態への対応:抑制ではなく「安全の確保」
躁状態では、本人が非常に活動的・攻撃的・無謀になっていることがあります。自覚がないことも多く、「止められる」と感じると反発されやすいため、正面から否定せず、環境を調整して安全を守ることが基本です。
支援のポイント:
- 一度に複数の予定や仕事を抱えないよう管理
- 買い物や契約など、金銭に関わる場面では同行や見守りを検討
- ハイテンションな言動は「否定」せず、「心配してるよ」とやさしく伝える
- 興奮が強い場合は医師との連携や休養の確保を優先
躁状態では、**「好調」ではなく「異常な高揚状態」**だと理解して、本人の尊厳を守りながら冷静に対応しましょう。
2. 抑うつ状態への対応:励ましより「寄り添い」
抑うつ状態のときは、気分の落ち込みだけでなく、疲労感・無力感・自己否定が強く現れます。「元気出して」「頑張れ」は逆効果になることもあるため、励ましではなく「否定しない聞き手」でいることが支援の基本です。
心がけたい対応:
- 「調子どう?」より「今日は来てくれてうれしい」など事実に基づいた声かけ
- 会話は無理に引き出さず、沈黙を受け入れる
- 予定や仕事は柔軟に調整し、プレッシャーを減らす
- 食事・服薬・睡眠など、基本的な生活リズムを整えるサポートを優先
「何もできない自分」を責める気持ちが強いため、存在そのものを受け入れてもらえていると感じられる関わりが安心につながります。
3. 気分の波を「記録と予防」でサポート
気分の波は突然に見えて、実は前兆やパターンがあることも。日々の変化を記録しながら、本人と一緒に波の予測と対処法を確認していく支援が有効です。
実践的な方法:
- 気分や睡眠時間を記録できる「気分日誌」をつける(アプリや紙など)
- ストレスのきっかけや体調の変化を一緒に振り返る
- 早期サイン(例:話し方が早口、睡眠時間が短くなるなど)を見逃さない
- 本人が「調子が悪くなる前に取れる行動」を一緒にリスト化する
「悪くなってから対応」ではなく、「波が来る前に備える」ことが、長期的な安定につながります。
4. 日常生活での支援:ルールと自由のバランス
双極性障害のある方には、生活リズムの安定が症状の予防につながるとされています。とはいえ、過度な管理は反発やストレスの原因にもなるため、「選択の余地」を残しながら支援することが大切です。
具体的な支援:
- 起床・就寝・服薬・食事の時間をある程度固定する
- 突発的な予定変更は避け、事前に知らせる
- 選択肢を提示して、自分で選べる環境を整える(例:「今日は散歩?読書?」)
- 疲れすぎないよう、休憩や自由時間を意識的に確保する
「規則正しく」+「自分らしく」を両立できる生活設計が理想です。
5. 周囲と連携し、孤立を防ぐ
本人も波の中で混乱しやすいため、支援者・家族・医療・福祉などの関係者間での情報共有と連携が不可欠です。
チーム支援のすすめ:
- 本人の同意のもとで、医療・福祉・職場と情報を共有
- ケース会議を定期的に実施して、支援方針を統一
- 支援者同士で役割分担を明確にする
- 家族もケアの対象とし、支え手が孤立しないように配慮
「関わる全員が味方である」ことが、本人の安心と回復を支える土台になります。
まとめ:波があっても「安心して戻れる環境」を
双極性障害は、気分の波という“変動のある特性”を持つ病気です。完全に波をなくすことは難しくても、波が来たときに本人が安心して休める、支えを頼れる環境があれば、安定した生活は十分に可能です。
支援とは、「正すこと」ではなく「支えること」。調子の良いときも悪いときも、否定せず、尊重し続けることが、もっとも効果的な支援につながります。