双極性障害(そうきょくせいしょうがい)は、気分の波が大きく変動する精神障がいで、「躁状態」と「うつ状態」が交互に現れることが特徴です。「気分の浮き沈みが激しい人」というイメージだけでは捉えきれない複雑さがあり、Ⅰ型とⅡ型の違いによって現れる症状や生活への影響も異なります。誤解や偏見を減らすためにも、まずはその特性を正しく理解することが大切です。この記事では、双極性障害の基本的な概要と、Ⅰ型・Ⅱ型の違いを中心にわかりやすく解説します。
双極性障害とは?
双極性障害は、うつ状態と躁状態(または軽躁状態)を繰り返す気分障がいの一つです。以前は「躁うつ病」とも呼ばれていました。
- うつ状態:気分の落ち込み、意欲の低下、疲れやすさ、自己否定感など
- 躁(そう)状態:気分の異常な高揚、多弁、多動、衝動的な行動、睡眠欲求の減少など
このように、「気分が落ち込むだけでなく、異常に高まる状態もある」ことが特徴であり、本人の意思ではコントロールできない脳の病気です。
双極性障害Ⅰ型とⅡ型の違い
双極性障害は、大きく**Ⅰ型(タイプ1)とⅡ型(タイプ2)**に分類されます。
分類 | 主な特徴 | 躁の強さ | うつの頻度 | 社会生活への影響 |
---|---|---|---|---|
Ⅰ型 | 強い躁状態とうつ状態が交互に現れる | 非常に強い | 比較的少ないが深刻なことも | 躁状態時の行動が非常にリスク大 |
Ⅱ型 | 軽躁状態とうつ状態が交互に現れる | 軽い(軽躁) | 頻繁で長期にわたることが多い | うつ状態の影響が大きく継続しやすい |
▸ Ⅰ型(双極Ⅰ型障害)の特徴
- 強い躁状態が現れる(1週間以上続く)
- 社会的・職業的に重大な支障をきたす行動に至ることがある(例:浪費、無謀な投資、暴言、多弁など)
- 入院が必要になるほど激しい場合もある
- うつ状態もあるが、躁のインパクトが大きい
躁状態の間、本人は「絶好調」だと感じることが多く、自覚が乏しい場合があるため、周囲が異変に気づくことが重要です。
▸ Ⅱ型(双極Ⅱ型障害)の特徴
- 軽躁状態が現れる(少なくとも4日以上)
- 社会的な支障は少ないが、やや落ち着きがなく活動的になる
- うつ状態が中心で、長期間続く傾向がある
- Ⅰ型よりも見過ごされやすく、うつ病と誤診されることも多い
軽躁状態は「少し元気で活発」くらいに見えるため、病気と気づかれにくい一方、本人にとってはエネルギーの波が不安定な状態が続く苦しさがあります。
うつ状態と躁(軽躁)状態の具体的な違い
状態 | 主な症状 | 本人の主観 | 周囲の印象 |
---|---|---|---|
うつ状態 | 落ち込み、疲労感、無気力、自己否定、不眠または過眠 | 「自分には価値がない」「何もできない」 | 元気がない、反応が薄い、心配になる |
躁状態 | 異常なハイテンション、睡眠欲求の減少、衝動的な行動 | 「なんでもできる」「自分は特別だ」 | 話が止まらない、急に行動的で違和感がある |
軽躁状態 | 少しテンションが高い、話が増える、活動的になる | 「最近調子がいい」「冴えている」 | 明るくなった、元気に見えるが少し落ち着きがない |
※ 軽躁状態は、一見「良くなったように見える」ため、支援や治療が中断されてしまうこともある点に注意が必要です。
なぜ誤解されやすいのか?
双極性障害は、状態の変化が激しく、一時的には「明るく元気」に見えるため、「本当は元気なのに落ち込んでるふりをしているのでは?」と誤解されがちです。
また、うつ状態が長引くⅡ型では、単なる「うつ病」と診断されるケースもあり、治療方針が誤ってしまうリスクもあります。
正しい理解と診断のもとで、躁と抑うつ、両方に対応した治療や環境づくりが必要です。
双極性障害と共に生きるということ
双極性障害は、適切な治療・支援・自己理解があれば、十分に安定した生活を送ることが可能な病気です。気分の波を完全になくすことは難しくても、自分の状態の変化に気づき、早めに対処することができれば、大きな不調を防ぐことができます。
次回のブログでは、双極性障害のある方への支援方法と、日常生活での接し方について詳しく紹介します。