障害福祉サービスについて

利用者の工賃向上を後押しする目標工賃達成加算の仕組みとは

    目標工賃達成加算は、就労継続支援B型事業所が利用者の工賃向上を目的に、計画的かつ実行的な取り組みを行い、その目標を達成した場合に支給される加算です。令和6年度の報酬改定で新設され、経済的な自立を支援する観点から、支援の質を数値で評価する制度として位置づけられています。この記事では、加算の概要、算定条件、実施例、注意点を整理し、制度の活用方法を解説します。


    目標工賃達成加算の概要

    目標工賃達成加算は、就労継続支援B型事業所が工賃向上を目的とした独自の計画を策定し、それを達成した場合に支給される成果型の加算制度です。利用者の労働環境や生産性を改善することで、より高い工賃を実現する取り組みを促進し、利用者の自立支援を後押しすることを目的としています。


    加算単位と対象範囲

    • 加算単位数:1日あたり10単位
    • 対象範囲:事業所全体に対して適用(※利用者1人あたりの加算ではありません)

    算定の前提条件と要件

    この加算を算定するためには、以下の要件すべてを満たす必要があります。

    1. 目標工賃達成指導員配置加算の算定が前提

    本加算は、すでに「目標工賃達成指導員配置加算」を算定している事業所に限られます。指導員の配置体制が整っていることが基礎となります。

    2. 工賃向上計画の策定と目標達成

    都道府県が示す「工賃向上計画」に沿って、事業所ごとに工賃目標を設定し、具体的な支援計画を策定・実行。その結果、目標達成が確認できることが必要です。

    3. 記録と報告体制の整備

    計画の進行状況や目標達成を証明する記録を保持し、自治体へ適時報告・提出できる体制を整備することが求められます。


    実際の取り組み内容

    工賃向上計画の策定

    • 利用者のスキルや作業内容に基づき、達成可能かつ意義ある目標を設定。
    • 例:年間平均工賃を1万円から1万2千円に向上させる。

    作業工程の見直しと効率化

    • 作業手順のマニュアル化や機器の導入により、作業時間の短縮と品質向上を図る。

    地域企業との協働

    • 地元企業との連携による新規案件の受注や共同生産活動の実施。
    • 例:商品の検品や包装作業などの請負業務。

    利用者への継続的な訓練

    • 定期的な研修、OJT、個別指導などにより、スキルの底上げと意識改革を図る。

    加算制度の活用にあたっての注意点

    現実的な目標設定

    • 工賃向上目標は、利用者と職員に過度な負担をかけず、実現可能な範囲で設定することが重要です。

    記録の正確性と保存管理

    • 取り組みの進捗、支援内容、成果などは日々記録し、監査時に備えて保存・管理を徹底します。

    指導員の配置体制の維持

    • 前提条件である「目標工賃達成指導員配置加算」の配置要件を満たし続ける必要があります。

    都道府県計画との整合性の確認

    • 自事業所の取り組みが、都道府県の工賃向上方針に整合する内容となっているか、随時確認と調整を行うことが求められます。

    制度活用の意義と展望

    目標工賃達成加算は、単なる加算支給にとどまらず、支援の成果を可視化する手段であり、事業所運営の質向上につながる制度です。利用者の労働意欲を引き出し、地域との連携を深めながら、経済的自立の可能性を広げることができます。また、定量的な成果指標が明確になることで、他機関や自治体との協力もしやすくなり、信頼性の高い運営基盤を築くことが可能です。

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