任意後見契約は、将来の備えとして注目される制度です。判断力があるうちに信頼できる人と契約を結び、判断能力が低下した際に生活や財産管理の支援を受けられる仕組みですが、契約には「公正証書」での作成が必要です。本記事では、公証役場での手続きや準備、契約までの流れをわかりやすく解説します。
任意後見契約とは?
任意後見契約とは、将来、認知症や病気などで判断能力が不十分になった際に備え、信頼できる人に生活や財産管理を依頼するための契約です。
- 契約時点では支援は始まらず、将来のための“備え”として結ぶもの
- 契約は必ず「公正証書」で作成することが法律で定められています
任意後見契約の流れ【5ステップでわかりやすく解説】
① 支援内容を検討する
まずは、自分が将来どんな支援を希望するかを整理しましょう。
- 預金や年金などの財産管理
- 医療や介護に関する手続き
- 日常生活のサポート(買い物、支払い、手続き代行など)
内容を明確にすることで、後見人との信頼関係構築にもつながります。
② 任意後見人を選ぶ
後見人は、家族、親族、友人、あるいは行政書士や弁護士などの専門職の中から選びます。
- 信頼できるかどうかが最重要ポイント
- 財産管理の知識や、法的な視点を求める場合は専門家が適任
③ 公証役場で契約を結ぶ
最寄りの公証役場に予約し、任意後見契約を公正証書として作成します。
- 契約当日は、本人と後見人予定者が同席するのが一般的
- 公証人が内容を読み上げ、意思確認のうえで契約を結びます
④ 法務局への登記(公証役場が対応)
契約が成立すると、公証人が自動的に登記申請を行います。
- 任意後見契約は、登記されて初めて法律上有効になります
- 登記は法務省の後見登記ファイルに記録されます
⑤ 判断能力低下時に契約が発効
将来、本人の判断能力が不十分になった際に、家庭裁判所へ申し立てを行い、任意後見監督人が選任されることで契約が発効します。
- 監督人が後見人の業務を見守るため、安心感があります
- 契約から支援開始まで“適切なタイミング”で切り替えが可能です
公正証書作成の費用目安
項目 | 費用の目安 |
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公正証書作成手数料 | 約11,000円~20,000円 |
登記手数料 | 約1,400円 |
その他費用 | 交通費・相談料・専門家報酬など(必要に応じて) |
※契約内容の複雑さによって変動する場合があります。
注意点と事前準備のポイント
- 契約時は本人の判断能力が明確にあることが条件
- 契約内容は具体的に記載しておくことでトラブル防止に
- 任意後見契約だけでは支援は始まらないため、必要時に申立てが必要
- 後見人との信頼関係が制度の根幹になるため、人選は慎重に行いましょう
まとめ:任意後見契約で安心の備えを
任意後見契約は、自分の意志を明確に残し、老後やもしものときの安心を支える法的手段です。
公正証書による契約は少し手間がかかりますが、一度結んでおけば将来の生活に大きな安心をもたらします。
「うちのケースではどう進めるのが良いのか?」と悩んでいる方は、行政書士などの専門家に相談することで、自分に合った契約内容の設計が可能です。