てんかんのある方にとって、最も大きな課題は「発作そのもの」よりも、発作に対する社会の誤解や恐れです。本人が安心して生活できるようにするには、発作が起きても落ち着いて対応できる環境と、周囲の正しい理解・準備が必要です。この記事では、てんかんのある方を支えるための具体的な配慮や支援の工夫について紹介します。
1. 発作時の正しい対応を知っておく
てんかん発作は突然起こることがあるため、支援者や周囲の人が冷静に対処できることが最も大切です。
一般的なけいれん発作(強直間代発作)の対応:
- 安全確保:周囲の物をどけて、ケガをしないようにする
- 時間を確認:発作がどのくらい続くかを把握(目安:5分以上続けば救急要請)
- 頭をやさしく支える(クッションやタオルなど)
- 舌をかまないように「口に何かを入れる」はNG!
- 発作後は横向きに寝かせ、回復を待つ
- 意識が戻った後も、しばらくは見守る(混乱していることがあります)
2. 発作の種類に応じた対応を本人と共有する
てんかんは発作のタイプが多様であるため、その人の発作パターンや対応法を事前に知っておくことが重要です。
具体的な準備例:
- 本人・家族から発作の様子や頻度を聞いておく
- 「発作時の対応メモ」や支援マニュアルを作成
- 医療機関からの指示や服薬情報を記録
- 救急連絡先・かかりつけ病院の連絡先を明記
3. 日常生活での配慮ポイント
てんかんのある方にとって、生活環境や習慣が発作の引き金となることもあります。無理のない生活リズムと安心できる空間づくりが大切です。
配慮の例:
- 十分な睡眠をとれるようスケジュールを調整
- ストレスや過労を避ける(休憩時間の確保)
- 点滅する光・まぶしい照明などを避ける(感光性てんかんの場合)
- 階段・浴槽・調理中など発作が起きたら危険な場面では見守りを強化
4. 本人の「安心材料」を尊重する
てんかんを持つ方の中には、自分の状態を把握し、発作の前兆(オーラ)に気づく人もいます。そうした本人の感覚を大切にし、自己管理の工夫を支援しましょう。
支援例:
- 「今日は調子が悪そう」と言ったら無理をさせない
- 服薬管理を一緒に行う(飲み忘れ防止)
- 周囲に安心できる支援者がいることを伝えておく
- 不安が強いときは静かな場所で過ごせるよう配慮
5. 教育・職場・地域での支援体制
てんかんのある方が安心して通学・就労・外出できるには、本人だけでなく周囲の理解と支援体制づくりが不可欠です。
教育現場での工夫:
- 教職員全体で対応方法を共有
- 保健室や安心して過ごせる場所を用意
- 修学旅行・行事の際は発作への対応を事前に確認
就労支援での配慮:
- 発作のことを開示するかどうかは本人の意向に沿って判断
- 業務量や環境を調整して疲れすぎないようにする
- 服薬時間を確保、発作時の避難ルートを確認
6. 偏見を減らすことも支援の一つ
てんかんに対しては今でも根強い偏見があります。正しい情報を周囲に伝えることも大切な支援のひとつです。
伝えるべきこと:
- 発作は誰にでも起こる可能性がある脳の一時的な興奮状態
- 発作時に命の危険は少ない(適切な対応があれば問題なし)
- てんかんがあっても普通に生活・仕事・学習ができる
周囲の「正しい理解」が広がれば、本人の社会参加や自立への大きな力になります。
まとめ:てんかんの支援は「備え」と「安心」の積み重ね
てんかんのある方が安心して生活するためには、発作が起きたときの対応だけでなく、日常からの配慮と信頼関係が重要です。
「発作が起きても大丈夫」「ここにいれば安心」——そう感じられる環境こそが、てんかんとともに生きる力になります。
支援者は、**「見守る力」「準備する力」「伝える力」**を意識し、本人と一緒に安心できる生活を築いていきましょう。