「突然倒れてけいれんする病気」というイメージだけが先行しがちな「てんかん」。実際には多様な症状があり、発作の種類や頻度、日常生活への影響は人それぞれです。誤解や偏見が多く、社会参加の障壁になりやすい一方で、正しい知識があれば安心して生活を送ることも可能です。この記事では、てんかんの基礎的な特徴や症状の種類、発症の仕組みなどをわかりやすく解説します。
てんかんとは?
てんかん(Epilepsy)とは、脳の神経に一時的な異常な電気活動が起こることで発作が生じる神経疾患です。乳児から高齢者まで、あらゆる年齢層で発症する可能性があり、100人に1人程度が発症するといわれる比較的身近な病気です。
発作とは?その仕組みと誤解
脳の神経細胞が突然、過剰に興奮することで起きるのが「てんかん発作」です。発作は一時的なもので、多くの場合は数秒から数分で自然におさまります。
「いつ、どこで、どのように起こるかわからない」という不安感から、本人や家族が外出や社会参加を控えてしまうこともありますが、適切な治療や配慮があれば通常の生活を送ることも十分可能です。
てんかんの主な発作タイプ
てんかんの発作にはさまざまな種類があり、必ずしも「けいれん」だけではありません。
1. 全般発作(脳全体から始まる)
■ 強直間代発作(けいれん発作)
- 突然意識を失い、全身が硬直したのち、ガクガクとけいれん
- 数十秒~2分程度で自然におさまる
- 発作後は眠ったり、ぼーっとすることが多い
■ 欠神発作
- 数秒間「ぼーっとする」「意識が飛ぶ」ような状態
- 短時間で回復し、本人は気づかないこともある
2. 焦点発作(脳の一部から始まる)
■ 意識がある発作
- 手足がピクピク動く、顔がひきつるなど
- 感覚の異常(チクチクする、においがする)などを訴えることもある
■ 意識がない発作
- 意識がぼんやりし、意味のない動作を繰り返す(口をもぐもぐする、うろうろ歩くなど)
- 話しかけても反応がない、目がうつろになる
発作の頻度や重さは人それぞれ
- 毎日発作がある人もいれば、数年に1回しか起きない人もいます
- 症状が軽く、本人や家族もてんかんだと気づかないケースもあります
- 一見落ち着いて見えても、発作以外に集中力の低下や疲れやすさを感じる人も
てんかんは「発作があるかどうか」だけでなく、その人の日常の困りごとや不安も含めて理解することが大切です。
てんかんの原因は?
てんかんの原因には、次のようなものがあります。
- 脳の損傷や病変(脳卒中、外傷、腫瘍など)
- 脳の発達の異常(胎児期・乳幼児期の影響)
- 遺伝的要因
- 原因が特定できない場合(特発性)
特に小児や高齢者では、脳の器質的な異常がなくても発症することがあり、治療で十分にコントロールできるケースが多いです。
てんかんは「障がい」なのか?
てんかんそのものは、すべての人に障がい認定がされるものではありません。
発作の頻度や生活への支障の程度に応じて、**障害者手帳の対象(身体・精神)**になる場合があります。
ただし、社会的な誤解や就労・通学での困難さが「見えにくい障がい」となっているケースもあり、周囲の理解と配慮が非常に重要です。
学校・職場・家庭での困りごと
- 発作を恐れて外出や参加を控えてしまう
- 周囲の視線や心無い言葉で自信をなくす
- 「ちゃんと薬を飲んでいるのに…」と自己責任を感じやすい
- 発作の影響で集中力・記憶力が落ちることもある
てんかんのある方は、「発作」そのものよりも、社会の反応や環境の壁に苦しむことが少なくありません。
まとめ:てんかんは「誤解されやすいけれど、支え合えば普通に暮らせる」
てんかんは決して珍しい病気ではなく、正しい理解と適切な支援があれば、安心して日常生活を送れる状態です。
発作の種類や頻度、生活上の困りごとは人によって異なるため、「てんかん=◯◯」と決めつけるのではなく、一人ひとりの状態に応じた理解が求められます。
次回のブログでは、てんかんのある方への具体的な支援方法と安心できる環境づくりのポイントについて紹介します。