障害福祉サービスについて

うつ病のある方への接し方|安心と信頼を築くための関わりの基本

    うつ病のある方への接し方には、特別な技術よりも「理解」「配慮」「待つ姿勢」が求められます。相手を元気づけようとした言葉が逆にプレッシャーになることもあるため、何より大切なのは「そっと寄り添う」こと。今回は、うつ病のある方と日常的に接するうえで心がけたい具体的なコミュニケーションのポイントや注意点を紹介します。


    1. 無理に励まさない

    「頑張って」「気の持ちようだよ」などの励ましの言葉は、一見やさしいように見えて、本人にとっては追い詰められる言葉になってしまうことがあります。

    理由:

    • すでに頑張っているため、これ以上を求められるとつらい
    • 「自分はもっと頑張らないといけないのにできていない」と責める気持ちが強まる

    代わりの関わり方:

    • 「大変だったね」「よく話してくれたね」と受け止める言葉をかける
    • 無理にアドバイスせず、ただそばにいることも支援の一つ

    2. 話を遮らず、評価せずに「聴く」

    うつ病のある方は、「自分は迷惑をかけているのではないか」「価値のない人間だ」と思いがちです。そのため、否定や評価のない「傾聴」の姿勢がとても重要です。

    心がけたいポイント:

    • 相手の話を最後まで聞く
    • 意見を押しつけず、「そう思うんだね」と受け止める
    • 沈黙を怖がらず、無理に話題をつくらない

    「何も言えなくても、ここにいるよ」という姿勢は、大きな安心感につながります。


    3. 本人のペースを尊重する

    うつ病の回復には時間がかかることもあり、良くなったり悪くなったりを繰り返すこともあります。焦らせることなく、本人のペースを受け入れることが大切です。

    避けたい言葉:

    • 「そろそろ元気になってもいいんじゃない?」
    • 「前はもっとできてたのに」

    望ましい対応:

    • 小さな変化や努力を認める(例:「今日は顔を見られてうれしいよ」)
    • 「調子が悪い日があるのも自然なこと」と伝える

    4. 日常的な接点を保つ

    うつ病のある方は、人との関わりを避けがちになることがありますが、孤立が続くと症状が深まる場合もあります。無理のない範囲で、つながりを保つ工夫が必要です。

    工夫の例:

    • 短いメッセージやLINEで「元気?」と気軽に連絡
    • 定期的に声をかけて「気にかけているよ」と伝える
    • 誘いは強制せず、「もし行けたら一緒にどう?」と選択肢を残す

    関係を押しつけるのではなく、「距離を取っても、いつでも戻ってきていいよ」と思ってもらえる関係が理想です。


    5. 支援の情報をそっと伝える

    本人が「病院に行く」「相談する」と言い出すことに抵抗を感じている場合もあります。そんなときは、支援機関や相談窓口の情報を強制せず、そっと紹介することが大切です。

    伝え方の工夫:

    • 「こういうところもあるみたいだよ。もし気が向いたら見てみてね」
    • パンフレットやサイトURLを渡すだけに留める
    • 「自分も知らなかったけど、調べたらこういう支援もあるんだね」と自然な形で共有

    本人が自分のタイミングで動けるよう、きっかけを用意しておくことが支援になります。


    6. 周囲の人も無理をしない

    うつ病のある方を支える家族や支援者自身が、疲れすぎてしまうこともあります。「自分だけで抱え込まない」ことも大切な支援です。

    • 家族会や専門家に相談して、支え手の心も整える
    • 完璧を求めず、「できる範囲」で関わる
    • つらいときは一緒に休む勇気を持つ

    「あなたが元気でいてくれることが、いちばんありがたい」と思っている人も多いのです。


    まとめ:大切なのは、そっと「寄り添う」こと

    うつ病のある方への接し方に必要なのは、「正しい言葉」よりも、「否定せず、そばにいる姿勢」です。無理に変えようとせず、本人の言葉や気持ちに耳を傾け、ペースを尊重しながら関係を保つことが、支援への第一歩となります。

    不安や無力感の中にいる人にとって、「理解されている」「一人じゃない」と感じられることが、何よりの力になります。

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